歯科技工士のパワハラの話
職場の技工部長は関西の方で、イメージでいうと、お笑い芸人の「千鳥のだいご」のようなしゃべり方をする人でした。ふつーに話していても少しキツい言い方に聞こえてしまう程の強めのなまりで、そんな人に怒られた時はふつーにビビります...。(中身は意外にやさしい)
完全に昭和を生きてきたような方で、パワハラなんて事を気にしたことがないような自由に生きてるような方でした。(何度も言うが中身は意外にやさしい)
新入社員
ある年の事、そんなパワハラ技工部長の元に、若い新入社員が入社してきました。
挨拶が小さい
1日目の朝、新入社員が「おはようございます」と言って部屋に入ると、「挨拶が小さい!」と技工部長の先制パンチが炸裂しました...。
技工部長は体育会系なので、こういった挨拶には厳しいです。そんな技工部長の放った一言は、その場を一瞬にして凍りつかせてしまいました。
この始めの一言で、すでに新入社員の心は折れてしまっていたのかもしれません。
始めの挨拶での印象が悪かったせいか、その後もその新入社員には少しアタリがキツかったように思えました。
模型作り
歯科技工士の仕事の1つに、「模型作り」というものがあります。模型作りとは、患者さんの口腔内の型をとり、その型に石膏を流すと石膏模型が出来上がります。
その石膏模型を、歯科技工士が歯を作るために整える事を「模型作り」と呼びます。
そんな模型作りの最初のステップに、回転している刃に石膏模型を押し当てて、余分な石膏を削り取る作業があります。回転している刃には、工業用のダイヤモンドが散りばめられていて、そこに押し当てて削るので、『ガァァァァ』とそれなりに大きな音がします。
- 刃に石膏模型を強く押し当てると『ギャャャャ』と鈍く大きな音がします。
- 刃に石膏模型を軽く押し当てると『シャャャャ』と高く小さな音がします。
当然新人は、大事な石膏模型を削りすぎないように“慎重”にやるため、少しずつ削って『シャャャャ』という音が部屋に響いていました。(まだ慣れていない職場で慎重に丁寧に削るのは当然です。)
しかし、関西弁の上司は、
「なにしてる?」
「そんな削り方してたらダメだ!」
と言いました。
続けざまに、
「俺は見なくても音を聞いただけでわかるんだ!」
「そんな音で削ってたらいつまで経っても仕事が終わらない!」
と強めの口調で言ったのです(実際は関西弁で話してます)。
まだ右も左もわからない新人が、慎重に仕事をしていただけなのに、それはさすがにキツ過ぎですよね...。
周りのみんなは「まだ新人なんだからしょーがないじゃないか...」と思っていたと思いますが、そんなことを言える空気ではありませんでした...。
そしてその新入社員は、1日目、2日目と事あるごとに叱られ、“3日目”から会社に来ることはありませんでした。
辞めるという選択
『最近の若いやつは!!」と上司は言いますが、自分が“時代遅れの老害”だと早く気付いてほしいです。
「石の上にも3年」と言いますが、さすがに劣悪な環境で3年もいる必要なんてないと思います。なので彼は辞めて正解だったのかもしれません。
もちろんこの職場で学べる事もたくさんあるかもしれませんが、私も結局この職場を離れてみて、今ではホントに辞めて良かったと心から思っています。ここにいる時は常識だと思っていた事も、離れてみて外の世界から見てみると、それは世の中からすると非常識だったってことがよくわかりました。
なので、自分にとって成長が出来る職場ならもう少し頑張ってもいいかもしれませんが、あまりに人間関係で悩んだり劣悪な環境だったら迷わずやめた方がいいと思います。
ただし、その場から逃げるのにも“勇気”が必要です。人は変化を嫌う生き物なのでなかなか踏み出せない方も多いと思います。
それでも一歩踏み出してみると、私のように“今までの苦労がバカみたい”に思える日がもしかしたら来るかもしれませんよ!