ブラックな歯科技工士の世界|とある先輩の話

今から20年前、私が20代の頃に働いていた職場の先輩の話をしよう。



年齢は40歳過ぎだろうか。

ふくよかな体型の優しい先輩だった。でもその先輩はよく遅刻する人だった。朝のあいさつは『おはようございます』ではなく、いつも『すみませんでした!』から始まっていた。仕事中もよく“うとうと”しながら作業をしていて、気が付くと寝息をたてて眠っているなんて事もしばしば...。

すると上司が、『○○~!!!』と先輩の名前を叫び、怒号を飛ばされたその先輩は『ビクッ』っとなって目覚める。

そんな事が1日に何度もあると、しびれを切らした上司が先輩に近付いていき、先輩の頭をひっぱたく!!

こんなことが日常茶飯事だった...。

悪いのはどっち?

さて、今の話を聞いて、悪いのはどっちだと思いますか?

もちろん手をあげてしまう上司が良くないのはもちろんだ。ただ、そうさせてしまう先輩にも責任があるのではないのか?

実はこの話には裏があって、先輩がそうなってしまうのには理由があるのだ。

悪いのは会社?歯科業界?

歯科技工士の世界はほとんどがブラック企業なわけで、この会社も例外ではない。なんと、その先輩の退勤時間は毎日「深夜3時~4時頃」だった。

睡眠時間なんてせいぜい“3時間”くらいしか取れないわけで、そりゃ寝坊もしますわ。うたた寝もしますわ。そしたら仕事も終わらなくなりますわ。

他の従業員も毎日深夜まで仕事をしているので、助ける余裕もなく、みんな自分の事で精一杯なわけで、どうにもならん..。

 

これが“ブラック”と言われている歯科業界の実態だ。しっかり管理していない会社も悪いのだが、こうでもしないと利益が出ない歯科業界の問題とも言えるだろう。

こうして悪循環になってしまい、負のループから抜け出せなくなってしまうのだ。すると、思考力も停止してしまいまい、仕事を辞めるという選択肢すら見失ってしまう。

こんな状態の歯科技工士が、世の中にはたくさんいるのだ...。